電波有効利用研究会 私は2005年にNECを退職前の約3年弱をCIAJ(情報通信産業ネットワーク産業協会)に出向していました。CIAJは情報通信機器メーカ―の産業団体で、参加メーカーの新年賀詞交歓会や毎年10月に幕張メッセで開催されるCEATEC(シーテック)を主催するだけでなく、各官庁の政策に協力する委員会活動をしています。そうした委員会活動の一環としてパブリックコメントの提出を担当していました。当時は3G移動通信システムが普及期で電波が足りなくなり、無線LANも普及が進み2.4Ghz帯だけでは足りなくなり5Ghz帯の開放が必要とされていました。そのため総務省では電波有効利用研究会を作り電波政策を変えようとしていました。CIAJは総務省のキャリア官僚のご指導に従って産業団体として協力したのです。当時の電波政策転換の主要課題の一つは電波解放政策として周波数割当てを将来必要な業種に配分しやすくしようとするものでした。 2004年9月16日“電波開放”政策を進める〜片山総務大臣 総務省と情報通信ネットワーク産業協会(CIAJ)が開催した「ワイヤレスIT産業シンポジウム」。 片山虎之助総務大臣は“世界最先端のワイヤレスブロードバンド環境”を整えるため、「広帯域の周波数を迅速に開放する」「自由な事業展開を推進する」として“電波開放戦略”を公約として掲げた。 当時の電波は無線局に5年間を単位として借用させ、電波需要を見て10年前から割当を検討しなおすこととし、電波利用料は無線局単位に徴収されていました。それではTV局は有利ですが、携帯電話端末に課金される移動無線は不利になります。それを割当てた周波数帯ごとに利用業者に課金しようとするものでした。 もう一つの主要課題はユビキタスネットワークの形成が新しい社会基盤整備の目標像として位置付けられており、総務省では「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」ネットワークにつながり、情報の自在なやりとりを行うことのできるユビキタスネット社会の実現を目指すu-Japan政策を取りまとめており、そのためホームネットワークを構成する情報家電に「まっさらな」電波を配分し混信をなくす様にするから、その周波数帯の利用料金を利用者である情報家電メーカーの産業団体(即ち、CIAJ)に、まとめて課金したいとうものでした。 電波政策の変更に際しては事前に関係者に連絡され調整されますが、総務省のホームページに公開され民間の意見をパブリックコメントで求め、その結果を踏まえて修正を行い最終報告書を作って決定に至ります。電波有効利用研究会の構成員でもある学者先生は電波料の値上げになるからと反対意見でした。同じく構成員であった情報産業機器を統括する経産省は機器の値段に反映され値上がりになるから絶対反対を事前から表明していました。 CIAJでは委員会の参加者である日立国際電気、松下通信、富士通、NEC、沖電気・・・を集めて協議しました。さらにソニー、松下電器、日立、シャープ・・・を集めた次世代情報家電ネットワークタスクフォースを立ち上げ協議しました。その結果を踏まえて電波開放政策には賛成するが、情報家電ネットワークへの周波数配分はユビキタスネット社会の到来が遅れていることを理由に反対のパブリックコメントを提出しました。結局、この意見が採用され電波解放政策が間もなく実施されました。 当時に構想されたユビキタスネット社会(u-Japan)は2020年では5G 、第5世代移動通信システムとして実現されようとしています。即ちIoT(Internet of Things)、様々な物がインターネットに接続され、モノがインターネットに繋がるシステムであり、ローカルには5Gを使った企業体無線ネットワークサービスです。さらに最新報道では日本では6Gの研究会が発足したようです。6Gはミリ波帯の周波数、あるいは光伝送を構想しており、5Gの10倍以上の伝送速度で、立体画像の伝送を想定しているようです。そういえば先日、NTTドコモから電話がかかって来て、私の愛用しているNEC製のガラ携がもうすぐ使えなくなるので、サービス期間中なので富士通製のらくらくホンに変えませんかというものでした。私のガラ携はiモード契約を解除して通話だけに使っていたので、特に不自由がなかったのですが、2026年3月になると3G の電波が止まるのだそうです。 |