老人にも勉強が必要かといったことを考えてみました。 例えば老境にある方に、あなたは定年退職して年金がそろそろ貰えるようになりますが、どう多く見ても余生は30年ぐらいでしょう。これからは社会に共生して勤労していた生活から解放され、個性としての生活を始められますがどのような生き方が良いでしょうか。健康であるには、何に着目して生きていったらよいでしょうか。更なる老境での社会共生は如何にしたら良いでしょうか。このような疑問に対応するために老人や高齢者に対する社会としての保護や導入教育もあってもより良いのではないかと思ってみたことがあります。あるいは高齢者は何をして過ごすのが良いのか、ボランティアも良いだろう、子育てに忙しい若い人たちのサポートも良いだろう、キャリアを生かして社会に貢献するのも良いだろう。しかしそういった生き方にも導入教育があってもいいのではないかと思ったことがあります。多くは自分が高齢者になったからですが、なぜ高齢者がまだ生きているのかと考えたとすればまったく無意味ないこととは思えません。 そもそも教育とは個人が将来の備えをするためにあるもので、人生の盛りを過ぎた方にさらに知識を提供したところで、定年後の生活が決まっている方々には必要ないことに気が付きました。生活方針が決まっているということは、高齢者になるまでの人生経験が自主的に決めてくれることであって、どのようにすばらしいことを考えても、それを乗り越えることは出来ないのです。ですから老境期の教育は必要ないのですが、時間を過ごし教養としての勉強はあっても良いと思っています。何を教養とするかは個人の選択でしょう。 高齢者の学び直しであるリカレント教育の場として政府が推奨している放送大学(Open University of Japan)では、どのようなテーマを考えているのかと思って検索してみたことがあります。元気な高齢者として有益な人生の過ごし方、有益と成果、反省と悔悟、メンタルと身体活動、etcと健康寿命に関するテーマが多いようでした。高齢者の学び直しとはすぐに効果があるものを選択するようです。「高齢者の生活ガバナンスと生きがい」、統制のとれた、理想的な生活を送れば健康寿命が伸びるものかについても考察したい。「ソーシャル・キャピタル(Social capital)と地域の協調行動」が活発化することによる社会の効率性化と健康寿命の延伸について考えるのもいいでしょう。 国の調査などでも、健康づくりのために行動する人と行動しない人が3:7の割合という結果が出ています。2000年より10年間、国は「健康日本21」という啓発活動を展開してきましたが、残念ながら、国民の行動変容にはなかなか結びつきませんでした。 しかし、これらの活動により、健康に対する基礎知識としては、日本は他国と比べても明らかに高い傾向が出ています。そのため、分っていてもできないという多数の方々を、健康づくりに導くしくみを開発することがこれからのイノベーションとして非常に重要です。 筑波大学の研究によれば、日常の身体活動量が高い層はヘルスリテラシーも高いことが示されており、ヘルスリテラシーの向上は日常の身体活動量の増加にも寄与すると考えられています。 封建制や身分制社会の構造が溶解・液状化されて近代が始まり、個人の運命をあらかじめ定めている制限がなくなりました。それに続いて、コミュニティや家庭といった構造も崩壊・混沌化されているのが現代であると捉えています。このような時代では知識やスキルは急速に陳腐化するので新しい知識の獲得が必要になります。しかも生涯にわたって、人々は自己形成や人格形成を絶え間なく続けていかなければならず、いつも選択と自己決定を迫られるという。このような時代では、教育や学習は人生前半期に特有なものではなく、生涯にわたって続けなければなりません。 高齢者に関する研究や政策の重点は、如何に健康寿命を延ばすかに置かれています。寝たきりの高齢者が増えたり、退職後無為に生きながらえている状況を改善し、高齢者の生活の質(QOL: Quality of Life)を高めるように移行しています。これがサクセスフル・エイジングの概念です。高齢期の人口の大半を占める健常者に目を向け、高齢期であっても健康で自立し社会に貢献できることに喜びを感じ、社会に参加して経済活動の一翼を担うこと、地域コミュニティにおけるサービス提供者になることが少子高齢化社会には必要なことです。更に進んで次世代社会の構築のプランニングや運営に参画することが求められます。どのような社会貢献がこれからできるかが生活ガバナンスとされています。 1950年代の米国において健康に関する施策がうまくいかなかった際に、どうしたら人々は特定の健康行動を積極的に取るようになるのかを考え、心理学の進展と相まって生まれたのが健康信念モデルでした。このモデルでは、人は、このままだと、例えば疾患になる可能性が高いと認識し、疾患がもたらす影響や治療しないと影響が重大になるとの認知し、このままではまずいと認知して、特定の行動をとる。健康状況について認知することが実際的・心理的にマイナスよりもリスクや重大性を減らす効力があり、プラスとなる行動とされています。 社会的認知理論では人間の行動を、個人的認知、環境の3つの要素からなる相互作用として説明しています。行動の結果を予測し、他者を観察することで学習し、その行動をとることが好ましい結果をもたらすと認知し、さらにその行動をとることができるという自信を認知した時に、その行動をとりやすくなる。特に自信をもって行動することができるという側面、自己効力感については健康領域では特定の行動をとりやすくなり、ストレスが低くなり、万一失敗があっても乗り越えることができるとされています。 |