生体は、健康な状態を維持していく上で、様々な恒常性維持(ホメオシタシス)の制御システムを有しています。生体内の生理活性物質とその受容体システムは生体に備 わったホメオスターシス制御システムの一つですが、一方 でその調節異常は、老化現象の進行や様々な生活習慣病の原因となります。こうしたホメオシタシス制御システムを統合的に理解し、人為的に介入・操作することができれば、 様々な病気の予防やアンチエイジング法の開発につながることが期待されています。 自らの体を環境に適応させ、安定させるホメオシタシスの3大システムが、「自律神経」、「内分泌」、「免疫」であり、このバランスを失わせる張本人こそがストレスなのです。免疫とは、生体を細菌やウイルスなど様々な病原体の侵入から守り、健康なからだに維持する機能です。「病は気から」ともいわれているように、免疫システムもまた、神経系や内分泌系と密接な関係にあることがわかっています。ここでいう気とはストレスのことを意味しています。「元気がある」、「気力がある」や「やる気がない」、「気が乗らない」など良くにも悪くにも使われるものです。「気」とは目に見えないエネルギーなどともいわれています。東洋医学(漢方)では気というのは、生命の源であり、血液と違って目には見えないが全身を駆け巡るエネルギーであり、常に私たちの体を出入りし、自然界に普通にあるものとされています。気を取り入れる力が上がるといろいろなことに取り組む力が湧き、気を取り入れる力が下がると病気になったりします。気は生命エネルギーである以上、その人の感情を大きく左右するからです。気というのはその時の状況で、プラス(正・陽)になったりマイナス(邪・陰)になったりします。常にどちらか一方であることはないのです。気分という言葉は「気を分ける」と書きます。まさにプラスとマイナスの気が分かれて、プラスが多ければ気分がいいし、マイナスが多ければ気分が悪くなります。それぞれの動きや巡りを良くすることで病気や症状を改善し、または健康維持のために常にバランスを整えられるよう動き回っているのです。病気は「病(やまい)の気」と書きますが、これはマイナスの気が多い状態です。だからこそプラスの気の割合を増やし、免疫力や自然治癒力を高めることが重要なのです。すなわち「病は気から」とは、病気や症状を快方に向かわせるためには、プラスのエネルギーを内外から体いっぱいに取り入れることが必要不可欠だという心の教えを表現しているのです。そのためには、気力を奮い立たせ、元気を出して事に取り組み、常に本気を貫き、時には気を落ち着かせて、やる気を起こさねばなりません。 気は英語ではaura(アウラ、オーラ)、ラテン語ではspirits(スピリトゥス、スピリット)と訳され、生命力や聖なるものとして捉えられた気息、つまり息の概念がかかわっています。しかしそうした霊的・生命的気息の概念が、雲気・水蒸気と区別されずに捉えられた大気の概念とひとつのものであるとみなされることによって、思想上の概念としての「気」が成立します。 生物、無生物に関わらず、全てのものの源である。 気には始まりも終わりもなく、連続的で分断・分割ができず、宇宙空間に満ちている。 気というのは、マクロとミクロで反応しあう。 気というのは決してなくならず、再生機能がついている。 気の動きというのは、因果律でなく、感応や相感というシステムで成り立っている。 世の中には陰と陽があること、男と女と相反するが共存すること、性快楽があること、気合とか思いが成り立つこと、武道は精神鍛錬から成り立つこと、感情には喜怒哀楽があることなどが人間の自然界に満ちている気といわれるもののようです。 気功と身体技法 精神的な身体技法として中国の気功があります。気功の目的は不老長寿とされていますが、気は基本概念であり、空気、特に呼吸によって出入りする息の意味であり、同時に生命を構成する微細な物質としてとらえられています。生命は気の集まりであり、生まれつき持っている気(元気)は歳を取るとともに劣化、散逸し、やがて死に至ると考えられています。それならば、使用済みの古い気は体外に排出して、新鮮な気を体内に積極的に取り込むことで、生命力を高め、寿命を伸ばすことが出来ると考えられています。これは、二酸化炭素を吐き出し、酸素を吸い込むことで生命活動が維持されるという呼吸法と同じことになります。 気は目には見えないが何らかの働きのあるものととらえられており、伝統中国医学では気血と言えば、具体的に体を巡っているものと考えられ、西洋医学で血液が血管を巡るのと同様に気は経路を巡るものと考えられています。鍼灸治療はそうした気血の巡りをよくすることであり、気は体内のある変化として感覚されるものを指すことが多いようです。 |